当院で取り扱っている疾患と治療

多焦点眼内レンズ(2重焦点・3焦点眼内レンズ)

白内障手術時に、眼内に入れるレンズは、一般的には単焦点の眼内レンズを使用します。

白内障手術後は調節機能がなくなるため、単焦点眼内レンズは焦点(ピント)が合う範囲が1点になります。このため、焦点が合う距離以外は眼鏡が必要になります。このため、焦点が合う距離以外は眼鏡が必要になります。

例えば、遠くに焦点が合っている場合には近方用の老眼鏡が必要となり、近くに焦点が合っている場合には遠方用の眼鏡が必要になります。

この欠点を補うために登場したのが多焦点眼内レンズです。

多焦点眼内レンズの特徴

  • 2重焦点眼内レンズは遠くと手元の距離(近方焦点距離は30cm、40cm、50cm、70cmとレンズの種類によって異なる)の2つの焦点があります。しかし、それ以外の部分はボケますので、ボケる部分が困る場合は眼鏡を使用する必要があります。
  • 3重焦点眼内レンズは、遠く・中間・近くの3つにピントがあるので、見える範囲は多くなりますが、全てが見えるわけではないので、どうしても不自由な部分がある場合はやはり眼鏡を使用する必要があります。

 多焦点眼内レンズは、光を遠くと近くに分けるため、単焦点眼内レンズと比べ遠く、近くともに少ない光で見ることになります。単焦点眼内レンズが100%の光で見ているとすると、多焦点眼内レンズ(2、3点焦点)は、遠く、近くともに大体30~40%程度の光で見ることになります。そのため単焦点眼内レンズに比べ、以下のような現象が発生します。

 1.コントラスト感度の低下・・・弱い光量で見るため、全体に見え方の質(画質)が単焦点眼内レンズに比べて落ちる。例)4Kテレビと昔の出始めの液晶テレビのような違い

 2.グレア、ハロー現象・・・光を2つあるいは3つに分けるときに光が散乱する。そのため特に暗所で光が散乱し、光の周辺に輪が架かって見える。

 3.見え方の慣れに時間がかかる・・・脳の視覚野という部分に、遠く、近くの2つあるいは3つの映像が同時に届くが、それを脳が今どちらを見ているのか判断しながら見ることになる。それがスムーズにできるようになるには早い方で1か月、時間のかかる方は6か月ほどかかる。特に近くの見え方に慣れるのに時間がかかる。どうしても慣れない人もおり、その場合は単焦点眼内レンズに入れ替えなどが必要な場合もある。

ブレンドビジョン法:加入度数の組み合わせによる近点焦点距離

多焦点眼内レンズを希望される方へ

 単焦点眼内レンズと同様に、眼内レンズ度数が予定とずれる場合があります。眼内レンズの度数は、眼球の計測結果をもとに経験式で計算し、レンズ度数を決定しているからです。度数がずれた場合は遠くも近くも見えにくくなる場合があり、ご希望があればレンズ入れ替えを行いますが、別途費用がかかります。

 また完全に眼鏡が不要になるわけではなく、必要に応じて眼鏡を使用していただくことが多いです。多焦点眼内レンズは、20代のときのような見え方に完全に戻すというわけではありません。手術前にご自分のライフスタイルや希望する見え方を医師に伝え、さまざまな多焦点眼内レンズの選択を含めて、十分な説明を受けご理解のいただいた上で手術をお受けください。

 当院では、見え方の特徴の異なる数種類の多焦点眼内レンズを採用しています。患者様のライフスタイルに合わせて眼内レンズの選択を行っています。詳しくは担当医にご相談ください。金額については、スタッフにご確認ください。

当院で採用している多焦点眼内レンズについて

 多焦点眼内レンズには、回折型と屈折型という2つの異なる構造のレンズがあります。

 回折型多焦点レンズは、同心円上にのこぎり状の段差を持つ構造を持ち、光の回折現象を利用して、2焦点眼内レンズでは遠用と近用の2つに、3焦点眼内レンズでは遠用・中間・近用の3つに光を分けます。そのため、焦点が複数できますが、単焦点眼内レンズより少ない光量で見ることになり、コントラスト感度は低下します(画質が落ちるということ)。また、光を分けるときに発生する光の散乱のため、特に暗所で光が散乱し、光の周辺に輪が架かって見える「グレア・ハロー」という現象が発生します。

 屈折型多焦点レンズは、遠近両用眼鏡のレンズのように、レンズの中に遠方ゾーン、近方ゾーンを作成、2つの焦点を作成します。このタイプも焦点が複数できますが、単焦点眼内レンズより少ない光量で見ることになり、コントラスト感度は低下します。回折型レンズよりもグレア・ハロー現象は少ないものの、遠方、近方の境目の部分で発生する「ゴースト」「シャドウ」と言われる屈折像のずれが生じ、像がにじんだ見え方になる現象があります。その現象を少なくするために、加入度数(近方を見るための度数)は弱くなり、遠方と中間の2焦点タイプが多いです。

 EDOF(Expanded Depth of Field)は、回折、屈折型多焦点眼内レンズの加入度数を弱くして、遠くと中間が見えるようにした多焦点レンズです。加入度数が少ないため、近くは見えにくいですが、グレア・ハロー・シャドウなどの多焦点眼内レンズに起こる不快な症状が出にくいといったメリットがあります。

 

当院で採用している多焦点眼内レンズ【回折型多焦点眼内レンズ】

 

名称 AcrysofIQシリーズ(Alcon)
ReStore/ PanOptics
Tecnisシリーズ
(AMO)
Finevision
(Physiol)
ReSTOREシリーズ
(Alcon) Tecnisシリーズ
(AMO) Finevision
(Physiol)
回折デザイン Not Full Diffractive
(周辺部は遠方単焦点)
ReStore : Apodised
PanOptics : NonApodised
Full Diffractive
Non Apodised
Full Diffractive
Apodised
3焦点
近方加入度数 ReStore(2焦点)
+3.0(近方40cm)
+2.5(Active Focus:近方60cm)

PanOptics(3焦点)
+3.25/+2.17(近方40cm/中間60cm)
+4.0(近方30cm)
+3.25(近方40cm)
+2.75(近方50cm)
+1.5(Symphony:近方70cm)
3焦点
+3.5/+1.75(近方30cm/中間70cm)
適応制度 先進医療対象 先進医療対象 自由診療
ReSTOR(レストア:Alcon社)

アルコン社製の回折型多焦点眼内レンズです。アクリル非球面着色レンズです。2焦点のReSTORは、周辺の非球面屈折領域と、中央の回折領域という構造で、夜間のグレア・ハローの軽減が図られています。暗い場所では近くがやや見えにくくなります。近用レンズの加入度数は3種類あります。厚生労働省により認可されている、先進医療対応レンズです。

 

TECNIS multifocal(テクニスマルチフォーカル:AMO社)

AMO社製の回折型多焦点眼内レンズです。アクリル製非球面透明レンズです。暗い場所でも近くが見やすい回折構造です。近用のレンズの加入度数は4種類あります。夜間はグレア・ハロー現象が起こります。またグレア・ハロー現象の軽減が考慮された着色タイプで加入度数の弱いSymfony(シンフォニー)もあります。厚生労働省により認可されている、先進医療対応レンズです。

 

FineVision(ファインビジョン:Physiol社)

PhysIOL社製の3焦点回折型多焦点眼内レンズです。眼内固定がよく、3焦点回折構造を用いているため、遠・中75cm・近方30cmの焦点にピントが合い、遠くから手元までバランスよく見ることができます。グレア・ハロー現象といった夜間の見えにくさも発生しにくくなっています。親水性アクリルレンズであるため、長期的に眼内レンズが白濁する「グリスニング」という現象はほぼなく、透明性が長期に維持されます。厚生労働省の認可がまだのため、完全自由診療のレンズとなります。

 

当院で採用している多焦点眼内レンズ【屈折型多焦点眼内レンズ】
名称 iSii
(HOYA)
Lentis Comfort
(参天製薬)
Miniwell
(SIFI)
iSii(HOYA) Lentis Comfort(参天製薬) Miniwell(SIFI)
屈折デザイン 同心円型
中央2.3mm径:遠方
2.3~3.24mm径:近方
3.24~6mm径:遠方
分節型
上方:遠方
下方:近方
同心円型
中央2mm径:近方
2mm~6mm:遠方
近方加入度数 +3.0(近方40cm) +1.5(近方70cm) +2.0(近方60cm)
適応制度 先進医療対象 保険適応 自由診療

 

iSii(アイシー:HOYA社)

HOYA社製の屈折型多焦点眼内レンズです。アクリル非球面着色レンズです。中央の遠方領域、その周りに近方領域、またその周辺に遠方領域という構造です。近方加入度数は+3.0D(40cm)で、瞳孔が開く暗い場所では近くは見えにくくなります。厚生労働省により認可されている、先進医療対応レンズです。

 

Lentis confort(レンティスコンフォート:参天製薬)

参天製薬が販売している屈折型多焦点眼内レンズです。アクリル製非球面透明レンズです。眼内レンズの上半分が遠方、下半分が+1.5D加入(80~100cm)の中間ピントで、手元は見えません。屈折型のため「ゴースト」と言われる像のにじみが生じる可能性があります。このレンズは保険診療で挿入可能です。

 

Miniwell(ミニウェル:SIFI社)

SIFI社製の屈折型多焦点眼内レンズです。中央が近方(70cm)、周辺が遠方の構造です。その構造のため、瞳孔が小さくなる明所ではやや遠方の見え方が低下することがあります。グレア・ハロー現象は起こりにくい設計です。厚生労働省の認可がまだのため、完全自由診療のレンズとなります。

 

当院で採用している多焦点眼内レンズ【その他】

 

名称 IC-8 追加型多焦点レンズ
(アドオンレンズ)
ReSTOREシリーズ
(Alcon)  
屈折デザイン 単焦点IOLにアパチャーが作成、開口径を小さくする⇒
焦点深度を深くする。
角膜不正乱視の人にも挿入できる。
既に眼内レンズが挿入されている方に挿入する、追加型のアドオンレンズ。2焦点・3焦点タイプあり。
回折型でグレア・ハロー現象あり。
適応制度 自由診療 自由診療
IC-8(アイシーエイト:AcuFocus社)

AcuFocus社のEDOF型眼内レンズです。単焦点IOLに黒いアパチャーを作成、開口径を小さくすることで焦点深度を深くする構造で、「角膜インレイ」と同じ原理になります。角膜不正乱視のある方は、一般的な多焦点眼内レンズの挿入は無理なため、このレンズの適応となります。グレア・ハロー現象は起こりません。厚生労働省の認可がまだのため、完全自由診療のレンズとなります。

 

追加型多焦点レンズ(アドオンレンズ)

既に眼内レンズが挿入されている方に挿入する、追加型のアドオンレンズです。2焦点タイプのCAMELLENS(SOLECO社)や3焦点タイプのSULCOFLEX(Rayner社)などあります。いずれも回折型でグレア・ハロー現象があります。すでに挿入されている眼内レンズの状態にもよるためすべての患者様に挿入が可能ではありません。また、厚生労働省の認可がまだのため、完全自由診療のレンズとなります。

 

挿入方法について

 2焦点眼内レンズは一般的には両眼に同じタイプのレンズを挿入します。その場合、遠方と手前が見えますが、3焦点眼内レンズとは異なり、中間距離はピントがボケてしまいます。また近方距離も既定の距離に限定されます。この対策として、近方視幅を広げるためにブレンドビジョン法という方法があります。また、両眼に2焦点眼内レンズを挿入した場合、夜間に光がはじけたように見える「グレア・ハロー」という現象が発生します。その現象を軽減するために、夜間の運転などを重視される方には、ハイブリッドモノビジョン法が適しています。

ご興味のある方は、医師にご相談ください。

 

当院は「多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術」の先進医療認定施設になっております。

先進医療特約保険に加入されておられる方は、保険会社から保険金が給付される場合があります。加入されている保険会社にご確認ください。

 

関連論文(当院医師執筆)

2019年4月 日本眼科手術学会誌No.2 2019 Vol.32「多焦点眼内レンズ挿入眼の硝子体手術」(森井眼科部長)

2018年7月 日本眼科手術学会誌No.3 2018 Vol.31「3焦点眼内レンズ」(森井眼科部長)