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肺炎球菌ワクチン

肺炎球菌について

肺炎球菌は、高齢者や持病のある方に重い肺炎や敗血症、髄膜炎などを引き起こす原因となる細菌です。特に高齢者に多い「市中肺炎」の主な原因であり、日本では肺炎が死亡原因の第5位となっています。感染を予防するために、肺炎球菌ワクチンの接種が推奨されています。

現在、成人に接種可能な肺炎球菌ワクチンは2種類あります。

  • ニューモバックス®NP(PPSV23)
    23種類の肺炎球菌に対応した「ポリサッカライドワクチン」です。
  • プレベナー20®(PCV20)
    20種類の肺炎球菌に対応した「結合型ワクチン」です。もともとは13価(PCV13)でしたが、2024年8月に20価のプレベナーが成人にも使用可能となり、カバー率が大きく向上しました。 この変更に伴い、日本感染症学会/日本呼吸器学会/日本ワクチン学会から合同で発表されている「肺炎球菌ワクチン接種の考え方」が更新されています。
ワクチンイラスト

ワクチンが効くしくみ(なぜ型が限られているのか?)

肺炎球菌は「莢膜(きょうまく)」というバリアーを持っています。これは細菌がヒトの免疫から逃れるための防御で、この莢膜があることで感染すると重症化しやすく、血液や髄膜に入り込む侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)を起こすことがあります。

肺炎球菌の莢膜には90種類以上の型があり、すべての型に対応するワクチンを作ることは現実的ではありません。しかし、感染を起こしやすい「重要な型」は限られており、現在のワクチンはそれらを優先的にカバーしています。

  • PPSV23(ニューモバックス®NP)は23種類の型に対応し、日本の成人IPDの約45%をカバー、肺炎球菌肺炎性肺炎の約67%をカバーするとされています。
  • PCV20(プレベナー20®)は20種類の型に対応し、日本の成人IPDの約45%をカバー、肺炎球菌性肺炎の約73%をカバーするとされています。

「90種類もあるのに、20種類で大丈夫なの?」と疑問に思われるかもしれませんが、感染しやすい型に優先的に対応しているため、現在のワクチンでも十分な予防効果が期待できます。

医師イラスト

それぞれのワクチンの特徴

ワクチン名(商品名) PPSV23(ニューモバックス®NP) PCV20(プレベナー20®)
ワクチンの種類 ポリサッカライドワクチン 結合型ワクチン(コンジュゲート)
接種方法 皮下注射 筋肉注射
定期接種 ◯(65歳以上が対象) ×(任意接種)
含有血清型数 23種類 20種類
日本の成人IPDに対するカバー率 約45% 約45%
ワクチンが対応している型の肺炎/
侵襲性感染症に対する予防効果
肺炎:約34%、IPD:約42% 肺炎:約46%、IPD:約75%
(PCV13データより)
効果の持続期間 約5年 長期持続(理論上は終生)
局所副反応の頻度 約60%(疼痛・腫脹など) 約80%(疼痛・発赤など)
全身副反応の頻度 約30%(倦怠感・発熱など) 約30〜50%(倦怠感・筋肉痛など)

接種の組み合わせについて

65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方より、接種の組み合わせについては以下のフローチャートのように推奨されています。要約すると以下になります。

  • PPSV23を既に接種済みの場合 → 1年以上あけてPCV20を接種可能。
  • 初めて接種する方 → PCV20単独でも高い予防効果が期待されます。

※PPSV23とPCV20を同時に接種することはできません。

ワクチンイラスト

明石市の助成制度(2025年4月時点)

明石市では、65歳以上の定期接種の他に、追加接種に対しても費用の一部を助成する制度があります。

【対象者】

  • 満65歳以上の明石市民
  • 前回接種から5年以上経過している
  • 医師が再接種を必要と認めた方(基礎疾患など)

※助成対象には、PPSV23だけでなくPCV20も含まれています。

※ワクチンの費用は全額助成ではありませんので、詳細は明石市保健予防課へご確認ください。

まとめ

肺炎球菌感染症は、高齢者や基礎疾患をお持ちの方にとって命に関わる疾患です。2024年に登場したプレベナー20®(PCV20)により、予防効果が高く持続性のある新たな選択肢が増えました。
どのワクチンをいつ接種するかについては、これまでの接種歴や健康状態により異なります。副反応や費用の点も含めて、主治医とよく相談のうえ、最適な接種計画を立てましょう。

参考文献