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肺炎球菌ワクチン

肺炎球菌について

細菌性肺炎は日本人の死亡率5位の疾患であり、肺炎の原因として最も多い病原体は肺炎球菌です。昨今は各種抗生剤に耐性を獲得した「多剤耐性肺炎球菌」が問題となり、治療に難渋することもあります。肺炎球菌はワクチンで予防することが出来、65歳以上の方に対して現在2種類のワクチンが使用できます。一つは、1回だけ定期接種が可能な「ニューモバックス®」、もう一つは任意接種の「プレベナー®」です。

肺炎球菌は、自分を守るために「莢膜」というバリアーを有しています。この莢膜はヒトの免疫反応から肺炎球菌自身を守る役割を果たします。この莢膜を有する結果、感染を起こすと重症化しやすく、血液や髄膜に細菌が侵入する「侵襲性肺炎球菌感染症 (invasive pneumococcal disease:IPD)」という重篤な感染を起こし得ます。莢膜は1種類だけではなく、90種類以上の型が存在します。肺炎球菌ワクチンは、この莢膜に対するワクチンであり、全ての型のうち「ニューモバックス®」は23種類をカバー、「プレベナー®」は13種類をカバーするため、それぞれ23価ワクチン、13価ワクチンと呼びます。「90種類以上のうちのたった20種類くらい?」と感じるかもしれませんが、頻度の多い型・少ない型や、感染を起こしやすい型・起こしにくい型がありますので、本邦のデータではIPDを起こす莢膜型のうち、それぞれニューモバックス®が約65%、プレベナー®が約45%をカバーすると言われています。実際、両ワクチンとも臨床研究などで肺炎予防効果が証明されているワクチンです(プレベナー®は海外のデータのみです)。

ワクチンイラスト

ニューモバックス®は上記の通り23価ワクチンですが、全肺炎球菌の約65%をカバーしているワクチンです。上記の如く、満65歳から5歳刻みの年齢の方に対して、1回のみ定期接種が可能です。接種から5年程度経過すると予防効果が減弱すると考えられており、肺炎リスクが高い方には5年から10年毎に繰り返し接種を考慮してもよいとされています。ただし、2回目以降の接種は任意接種になります。65歳未満でも、免疫抑制剤使用など感染リスクの高い方に対して接種が可能です(この場合も任意接種です)。投与方法は皮下注射です。

もう一つのプレベナー®は、長らく小児の肺炎球菌感染予防として使用されてきたワクチンです。2014年からは高齢者肺炎球菌感染予防として、2020年から年齢を問わず感染リスクの高い方に対して接種が可能となっています。プレベナー®はニューモバックス®よりも予防範囲が狭いですが,その予防効果が長期に(理論上終生)持続するため、ニューモバックス®のように予防効果減弱のため再接種を検討する必要はありません。さらに、プレベナー®には「ブースター効果」と言って、ニューモバックス®の効果を高める作用もあると言われています。ニューモバックス®と違い、筋肉注射での投与になります。

医師イラスト

十分な肺炎球菌感染予防に対してはニューモバックス®を5年毎に接種、という対策が考えられますが、特に免疫抑制状態など感染に注意が必要な方に対しては、プレベナー®の併用という手段があります。この2種類のワクチンは同じ日に同時接種が出来ません。ニューモバックス®を先に接種する場合はニューモバックス®接種から1年以上あけてプレベナー®を接種します。プレベナー®を先に接種する場合は、プレベナー®接種から半年以上あけてニューモバックス®を接種します。最も入念な肺炎球菌感染対策としては、満65歳のニューモバックス®を接種する半年前にプレベナー®を接種、以後ニューモバックス®を5年以上あけて接種を繰り返す、という手順になります。ニューモバックス®だけでもある程度の感染予防効果が期待できますので、5年以上の間隔をあけながらニューモバックス®接種を繰り返されてもよいと思われます。勿論、ワクチンの副反応や価格の問題等、ワクチンを繰り返し接種する事のデメリットもありますので、主治医の先生と相談しながらワクチン接種について検討されるのがよいでしょう。

ワクチンイラスト

また、明石市では、65歳以上のニューモバックス®定期接種以外にも、感染リスクの高い方に対しては、もう1回だけ予防接種に対する費用の一部に補助が出る、という日本全国でも非常に珍しい助成制度があります。 下記のすべてに該当する人が対象となります。肺炎球菌ワクチン追加接種の助成制度についての詳細は明石市保健予防課のホームページをご参照ください(https://www.city.akashi.lg.jp/shimin_kenkou/iryou_ka/suitouhaienn.html)。勿論、ワクチン追加接種の是非については、主治医の先生と十分ご相談ください。

明石市の高齢者肺炎球菌
ワクチン再接種(任意接種)
費用助成の対象となる方

  • 満65歳以上の明石市民
  • 過去に肺炎球菌予防接種を受けたことがあり前回の接種より5年以上経過している方
  • 疾病等により医師が肺炎球菌の再接種を必要と認めた方(基礎疾患などで肺炎による重症化リスクが高い)

この明石市独自の助成制度の対象は、ニューモバックス®だけではなくプレベナー®も含まれています。この2種類のワクチンは価格が異なり、費用が全額負担されるわけではないので、ご注意下さい。ご紹介しました2種類の予防接種の特徴を踏まえ、主治医の先生と肺炎球菌ワクチンの接種についてご相談されてみては如何でしょうか。

ワクチ別説明

参考文献

  • 65 歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方(第2版).
    日本呼吸器学会呼吸器ワクチン検討WG 委員会/日本感染症学会ワクチン委員会・合同委員会.
  • 呼吸臨床 2018年第2巻1号.
  • UpToDate. Pneumococcal vaccination in adult.
  • 明石市ホームページ.