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診療内容・特色

産科案内/帝王切開について

産科案内/帝王切開について 出産を控えた女性にとって心配になるのが分娩方法です。赤ちゃんを安心して産みたいと願うのは当然のことですね。しかし、出産にはさまざまな問題が生じることがあり、お母さんや赤ちゃんのためにお腹を切って赤ちゃんを取り出すことがあります。これが帝王切開による出産です。さまざまな理由で帝王切開が選ばれますが、赤ちゃんを産むことに変わりはありません。医師の説明をしっかりと聞き、わかるまで質問して、納得して受けることで自分らしい出産になることと思います。

当院の帝王切開術率について

当院の帝王切開術の率は全体で約18.4%(令和元年)です。反復帝王切開術を除く初回帝王切開術の率は9.3%(令和元年)です。

帝王切開になるケース

帝王切開の種類には、以下の2つがあります。どちらも医師が必要と判断して行われます。

選択(予定)帝王切開

通常は36週までの検診結果をもとに自然分娩が難しいと判断されると帝王切開が選ばれ、37~38週頃に手術が行われます。

緊急帝王切開

赤ちゃんあるいはお母さんの体に何か問題が起き、急いで赤ちゃんを取り出す必要がある場合に行われます。出産の途中や出産直前に手術が決まり、お母さんやご家族の方に同意を得て、迅速に行われます。

選択(予定)帝王切開がおこなわれる主なケース
逆子(骨盤位)(さかご(こつばんい))
アンカー逆子(骨盤位)(さかご(こつばんい))

通常、赤ちゃんはお母さんの子宮の中では頭を下にしていますが、頭を上にした姿勢でいることを「さかご」といいます。 自然分娩を行うと大きな頭が最後に出るため、臍帯(さいたい:へその緒)が赤ちゃんの頭と産道にはさまれて赤ちゃんに十分な酸素が届かなくなる恐れがあります。赤ちゃんの安全性を重視して帝王切開が選ばれることがあります。

児頭骨盤不均衡(じとうこつばんふきんこう)

赤ちゃんの頭がお母さんの骨盤に比べて大きかったり、骨盤の形に問題があると、赤ちゃんの頭が骨盤を通り抜けられず、自然分娩が難しくなります。

子宮筋腫(しきゅうきんしゅ)

子宮筋腫は、子宮にできる良性の腫瘍(コブ)です。小さな子宮筋腫があっても経腟分娩で無事に出産できる場合がほとんどですが、筋腫の位置や大きさによって経腟分娩が不可能な場合もあります。産道をふさぐような筋腫の場合は帝王切開がおこなわれます。

前回帝王切開(ぜんかいていおうせっかい)

以前に帝王切開をしていると、子宮の傷あとが伸びて薄くなっていることがあります。そのため無理をすると子宮破裂の危険性があるので、帝王切開が選ばれることが多くなります。

高齢出産(こうれいしゅっさん)

高齢(医学的には35歳以上)になると子宮口や腟壁の柔らかさが低下し、赤ちゃんが通り抜けられる大きさに広がらない場合があり、帝王切開が選ばれることがあります。

多胎妊娠(たたいにんしん)※
アンカー多胎妊娠(たたいにんしん)アンカー前置胎盤(ぜんちたいばん)

双子、三つ子などを妊娠していると、切迫早産(正常の分娩時期より前にお産になりかけている状態)や妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)の割合が高くなります。お母さんや赤ちゃんへの負担が大きくなるため帝王切開が選ばれることがあります。

前置胎盤(ぜんちたいばん)※

胎盤が子宮の出口を塞いでいるため、赤ちゃんが出てこられないケースで、出血も多くなります。原則として帝王切開が選ばれます。

※多胎妊娠と前置胎盤に関しましては、他施設(高度医療機関)へ紹介させて頂きます。

緊急帝王切開がおこなわれる主なケース
胎児機能不全(胎児仮死)(たいじきのうふぜん(たいじかし))

分娩中にときどき起こる合併症で、多くは臍帯(さいたい:へその緒)が圧迫されたり、胎盤機能の低下などにより赤ちゃんが十分に酸素を受け取れないことが原因で起こります。そのため、すぐに赤ちゃんを取り出す必要があります。

常位胎盤早期剥離(じょういたいばんそうきはくり)

赤ちゃんの出生前に胎盤が剥がれることで、子宮内に大量の出血が起こり、危険な状態になることから、すぐに赤ちゃんを取り出す必要があります。

微弱陣痛(びじゃくじんつう)

子宮の収縮力が弱い、陣痛の持続時間が短い、陣痛の間隔が長いなどの状態が続くとお母さんが疲れてしまいます。 陣痛促進剤で陣痛を強くしますが、それも有効でなく自然分娩ができない場合があります。

遷延分娩(せんえんぶんべん)

子宮口が硬いため十分開かずにお産が長引く状態です。この様なケースでは帝王切開に切り替えることもあります。

回旋異常(かいせんいじょう)

出産の時、赤ちゃんは産道(赤ちゃんの通り道)の形に合わせて、頭を回しながら(回旋)下りてきますが、この回旋がうまくいかないことがあります。

重症妊娠高血圧症候群(子癇・HELLP症候群)

→詳しくはこちら

入院から退院までのスケジュール
  ママ 赤ちゃん
手術前日 ・術前の説明
・ノンストレステストを行います(40分間)
・夜0時以降は絶食です
ゆっくりおやすみください
 
手術当日 ・朝7時以降は絶飲食です
・手術前に点滴を開始します
(術後、翌朝まで持続点滴をおこないます)
※手術の流れはこちらから
・出生後、ママと触れ合ったあと、呼吸状態のチェックのために保育器に入り、時間おきに体温等の全身状態のチェックを行ないます
・状態に応じて、K2シロップを飲みます。ビタミンKは、母乳には含まれないビタミンで、 赤ちゃんの脳内出血を予防します
・おなかがすいたらミルクを飲みます
術後1日目 ・おっぱいチェックを行います
・朝から食事が出ます
(全粥→常食)
・歩行を開始します
・初めての沐浴
・黄疸チェックを開始します
・水、土曜日に小児科医による診察があります
術後2日目 ・午後から授乳がはじまります
・硬膜外(麻酔)チューブを抜きます
→シャワーが可能になります
入院中に聴力検査をします
術後3~4日目 ・初産婦さんを対象に沐浴指導があります
・ママの回復を優先するため夜間の授乳はスタッフが行いますがご希望の方はスタッフまで
 
・初産婦さんを対象に沐浴指導があります
・ママの回復を優先するため夜間の授乳はスタッフが行いますがご希望の方はスタッフまで
 
術後5日目 ・退院後の生活について助産師より説明があります 先天性代謝異常検査
結果は、1ヶ月健診でお渡しします
術後6日目 退院おめでとうございます!
術後6日目 ・午前中の退院となります。11時前後に医事課スタッフがお部屋まで請求書をお持ちします(日・祝日の場合は前日) 黄疸が強い時や、体重増加がみられない時など、赤ちゃんだけお預かりすることもあります
  • 入院中、火曜日・金曜日のどちらかで、ホテルオークラのディナーを楽しんで頂きます。ご家族の方でご希望がある時は、お一人様17000円にてお食事して頂けます。
  • 毎週月、木曜日のお昼ご飯は多目的ホールで召し上がって頂いています。お部屋とちがって開放感がありBGMが流れる中会話も自然にはずみます。お友達をたくさん作りましょう。
  • エステティシャンによる、マッサージで癒しの時間をお楽しみください。
  • ご不明な点は、何でもお気軽にスタッフ・医師までお聞き下さい。
  • 会計は、退院当日(日、祝日の場合は前日)に請求書をお持ちいたします。当院では、便利なクレジットカードや、デビットカードをご利用いただけます。現金は、病室には置かないで下さい。詳しくは、病院会計でお聞き下さい。
  • 入院中のお食事やエステサービスについてはこちら
Q.帝王切開の出産費用は高いのでしょうか?

A.患者様にお支払頂く額は、自然分娩より高くなります。健康保険適用の帝王切開術の費用に加え、自費分として分娩介助料を頂いております。ただし、健康保険分は、1か月の医療費が一定の限度額を超えた場合は、高額療養費制度の対象となるため、負担額が抑えられる場合がございます。そのため、入院前に限度額認定証発行の手続きを頂くようご案内しております。

手術について
手術前の処置
  • 浣腸をおこないます(便秘をしている方)
  • 赤ちゃんの心音聴取を行います
  • 点滴を開始します(翌朝まで持続点滴を行います)
  • 手術部位の除毛をします
手術の流れ

1. 麻酔をします

麻酔
  • 腰椎麻酔と硬膜外麻酔を組み合わせて行います
  • 膀胱留置カテーテルを入れます
  • お母さんの意識ははっきりとしているので、手術中に赤ちゃんの産声を聞くことができます
    ※状況によっては全身麻酔のこともあります

2. 下腹部の皮膚を切開します

下腹部の皮膚を切開
  • 一般に、次も帝王切開となった場合に処置がしやすく、手術時間が短い縦切開が行われていますが、当院では、痛みが少なく手術のあとが目立ちにくい横切開をできるだけ選択しています
    ※前回帝王切開で縦切開をされている方は、今回も縦切開となります

3. 赤ちゃんを取り出します

  • 子宮の下部を横に切開し(状況によっては縦切開)、赤ちゃんを包んでいる卵膜を破ると赤ちゃんが取り出されます
  • ついで胎盤を取り出してお産は終了します

4. 子宮とお腹の傷を縫い合わせます

  • 子宮は吸収糸(溶ける糸)で縫い合わせ、止血を確認した後、お腹の傷を縫い合わせ、皮膚は溶ける糸やステープラーなどで止め、シールでカバーして手術は終了です
  • 手術はおよそ40分から60分で終了します

5. お部屋に移動し、経過をチェックします

  • 自動血圧計・心電図モニターを装着し、定期的に子宮の収縮や出血の量を確認します
  • 術中の硬膜外チューブを利用して、術後の痛みを継続的に和らげます。また必要時、自己注入ができるためより痛みを少なくできるよう配慮しています。それ以外にも坐薬や飲み薬の痛み止めを使用していただけます。
  • 硬膜外麻酔は術後2日目まで施行しますが、それ以外にも坐薬や飲み薬の痛み止めを使用して頂けます
  • 痛みは我慢せずスタッフにお伝えください
Q.痛みはいつまで続きますか?

A.痛みの感じ方には個人差があります。1~2日硬膜外麻酔のチューブを入れたままにして痛みを軽くします。その後、痛みが強いときには痛み止めを処方することもあります。寝返りや咳をする時などは痛みますが、少しずつ日常生活に支障がない程度の痛みになります。

「新生児一過性多呼吸」って?

帝王切開で産まれた赤ちゃんは、経膣分娩に比べてこの呼吸障害が起こりやすいと言われています。子宮内にいる赤ちゃんの肺には羊水が充満しています。経膣分娩では、肺の羊水は狭い産道を通ってくる過程で外に搾り出されることが多いのですが、帝王切開はいきなり外に出てくるので、肺に羊水が溜まったままであることが多く、そのために呼吸障害を起こしやすいので、生後約1日は保育器内で経過観察します。もし起こったとしても1~3日で軽快する、予後良好な呼吸障害であることがほとんどですが、重症な場合はこども病院等へ新生児搬送になることがあります。

退院後の生活について
アンカー退院後の生活について

当院では約10日目と約1か月目の2度、検診を行っています。
内容につきましてはこちらをご参照ください。

帝王切開で出産しても、赤ちゃんの発育は自然分娩の場合と基本的には変わりませんし、子育てに何か特別なことがあるわけでもありません。ただし、帝王切開は手術なので、傷の回復などの面でお母さんの身体に負担がかかることが考えられます。出産後は体力の回復を心がけ、子育ての問題は一人で抱え込まずに周囲の人に協力してもらうことも大切です。

次回の妊娠とアフターケア

一ヵ月健診で異常がなければ性交渉を行うことができます。ただし、産後月経再開には個人差がありますので避妊を忘れずに。帝王切開の後は、子宮の傷の経過やお母さんの疲労も考え、次回の妊娠は6カ月以上間をあけることをお勧めします。

Q.次のお産も帝王切開になるの?

A.帝王切開による出産の経験がある方は、子宮破裂の危険性が高くなりますので、安全を考えて当院では次の出産も帝王切開としております。

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